「台風、洪水、大雨など、水害による被害が増えているように感じる。過去にはどのような水害が起きているのだろう?今後の水害対策に役立てるため、過去の水害について知りたい!」と考えている防災担当者は多いでしょう。
日本では台風をはじめ、大雨やゲリラ豪雨、洪水などによる水害が発生しています。
なかには多数の死者や行方不明者、負傷者が出た大規模な水害も。
過去事例を知り、今後の対策に役立てるのは重要です。
この記事では、過去に発生した水害事例について紹介します。
水害の基礎知識からわかりやすく説明しますので、今後の水害対策にお役立ていただけると幸いです。
日本の水害被害を一覧
発生年 | 災害概要 |
平成26年 広島県 | 3時間雨量で217.5mmを記録し、広島市としては観測史上1位となった大雨。浸水のほか、166件の土石流・土砂崩れが同時多発的に発生。 |
平成27年 関東・東北 | 河川からの越水、溢水、堤防の決壊などにより各地で大規模な浸水被害。最大24時間雨量は200mmを超え、観測史上1位を記録するほどの記録的な大雨。 |
平成28年 北海道・東北 | 台風第7号・第11号・第9号の3個の台風が北海道に上陸。平年の2〜4倍となる500ミリを超える大雨。 |
令和元年 東日本 | 静岡県や関東甲信地方、東北地方を中心に広い範囲で記録的な大雨。最大瞬間風速40m、全国142箇所で堤防が決壊。 |
令和2年 九州 | 九州を中心に暴風、大雨、高波、高潮。観測史上1位の値を超える記録的な暴風を観測。 |
水害とは
水害とは、水による災害の総称です。
代表的な水害には、次のようなものがあります。
- 暴風雨
- 豪雨
- 洪水
- 浸水
- 冠水
- 土石流
- 土砂崩れ
- 山崩れ
- 崖崩れ
洪水などは水害としてイメージしやすいでしょう。
大雨やゲリラ豪雨などで河川が増水し、水があふれる現象です。
道路などに水があふれ、物が流されてしまうことも。
また、市街地に水があふれることもあります。
下水道や排水路・側溝など、雨水の排水の処理が遅れるためです。
山や谷などでは、大雨の影響で土・石・砂が崩れることもあります。
その現象が土砂崩れです。
このように、水による災害は多く発生しています。
水害は3種類
水害は大きく3種類にわけられます。
それぞれの水害について、特徴を表にまとめました。
外水氾濫 | 大雨などで河川の水かさが増してしまい、水位が上がったことで起こる氾濫 |
内水氾濫 | 市街地に大雨が降った際、下水道や排水路・側溝など、雨水の排水の処理が遅れることによって起こる氾濫 |
都市型氾濫 | 東京・大阪・名古屋などの都市圏で起こる内水氾濫 |
『都市型氾濫』はあとから追加された種類の水害です。
都市部は道路の表面がアスファルトやコンクリートで舗装されていることが多く、雨水が地面に浸透しにくいために起こります。
水害の種類を知っておくと、今いる地域がどのような水害に遭ってしまいやすいのか想像できます。
日本の水害における死者数
日本では水害による死者が出ています。
近年発生した大規模水害による死者数は、次のとおりです。
発生年 | 発生地域 | 死者数 |
2019年(令和元年) | 関東 | 463名 |
2020年(令和2年) | 九州 | 86名 |
水害が起こる原因
水害が起こる原因は、大きく2つにわけられます。
気象的要因 | 台風(熱帯低気圧)、ハリケーン、前線(梅雨・秋雨)、温帯低気圧、積乱雲、線状降水帯の出現などによって起こる豪雨、集中豪雨、雪解け水の増加(融雪洪水)、潮位異常、高潮(海嘯)・高潮位 |
社会的要因 | 山林の過度の伐採・開拓・宅地造成による森林の保水機能の低下、冠水しやすく住宅地には不向きな土地を宅地化、治水の立ち遅れ、舗装路が増えすぎた、落ち葉などゴミによる道路の雨水(排水口)の詰まり、都市部や農地などでの排水の不良 |
このほかにも、自然河川の容量や治水施設の当初基準が、年々異常気象が増えるであろうことを正しく予想していなかったことも原因として挙げられます。
当初基準を上回る大雨などが発生した場合、氾濫などにより水害となってしまいます。
水害が起きたらどうなる?過去の水害被害事例
水害が起きると、どのような被害に遭ってしまうのでしょうか?
過去に起こった水害被害を振り返ってみましょう。
- 平成26年 広島県
- 平成27年 関東・東北
- 平成28年 北海道・東北
- 令和元年 東日本
- 令和2年 九州
ここからは、過去に起こった水害被害の事例を紹介します。
平成26年 広島県
平成26年8月に大雨が発生しました。
3時間雨量で217.5mmを記録し、広島市としては観測史上1位となった大雨です。
この大雨により広島市では浸水のほか、166件の土石流・土砂崩れが同時多発的に発生。
水害・土砂災害による市町村単位の人的被害としては、昭和57年の長崎災害以来の大規模水害となりました。
水害被害となった要因としては、バックビルディング現象が原因のひとつです。
バックビルディング現象とは、同じ場所で積乱雲が繰り返し発生する現象です。
平成26年8月に発生した広島県の大雨では、このバックビルディング現象が発生し、広島市安佐南区と安佐北区を中心に猛烈な雨が降りました。
これにより3時間雨量で217.5mmを記録するほどの大雨となったのです。
平成27年 関東・東北
平成27年9月に記録的な豪雨が発生しました。
この豪雨による河川からの越水、溢水、堤防の決壊などで各地で大規模な浸水被害を受けました。
これにより、次のような被害が相次ぎました。
- 住宅の全壊・半壊
- 床上浸水
- 床下浸水
- 崖崩れ
- 土石流
- 断水
- 道路の通行止め
台風17号18号の影響で、線状降水帯と呼ばれる発達した帯状の雨雲が南北にかかり続けました。
最大24時間雨量は200mmを超え、観測史上1位を記録するほどの記録的な大雨です。
平成28年 北海道・東北
平成28年8月に、台風第7号・第11号・第9号と3つの台風が北海道に上陸しました。
北海道道東を中心に大雨となり、河川の氾濫や土砂災害が発生。
その後8月29日に、台風第10号が北海道に接近したことで記録的な大雨が降っています。
北海道道東の太平洋側の広い地域では8月の観測値が平年の2〜4倍となる500ミリを超えました。
これは観測史上第1位の雨量を記録するほどの大雨です。
これにより、次のような被害が確認されています。
- 常呂川水系で堤防の決壊、越水による被害
- 石狩川水系石狩川で堤防の決壊等による被害
- 空知川および北海道で堤防の決壊等による被害
- 十勝川水系札内川で堤防の決壊等による被害
- 戸蔦別川で堤防の決壊等による被害
- 十勝川水系戸蔦別川で家屋浸水や倒壊
- 足寄川で家屋浸水や倒壊
- 芽室川で家屋浸水や倒壊
- ペケレベツ川および石狩川水系で家屋浸水や倒壊
- 常呂川水系で家屋浸水や倒壊
これらのほか、農作物の浸水や作物・土壌の流出、土砂の流入などにより甚大な被害が発生した水害です。
参考:水害レポート2016
令和元年 東日本
令和元年10月に関東・東北を通過する台風が発生しました。
台風の発達した雨雲や台風周辺の湿った空気の影響で、静岡県や関東甲信地方、東北地方を中心に広い範囲で記録的な大雨となりました。
そのため「東日本台風」と呼ばれています。
東日本台風では、最大瞬間風速40mを超える暴風でした。
全国142箇所で堤防が決壊するなど、次のような甚大な被害が発生しています。
- 死者99人、行方不明3人
- 家屋の全壊3,081棟半壊24,998棟、
- 床上浸水12,817棟、床下浸水24,472棟
参考:水害レポート2019
令和2年 九州
令和2年9月に大型台風が九州に接近しました。
台風の影響で、九州を中心に暴風、大雨、高波、高潮をもたらし、人的被害が発生しています。
長崎県野母崎では最大風速44.2m/s、最大瞬間風速59.4m/sとなり、観測史上1位の値を超えるなど記録的な暴風を観測。
宮崎県神門では24時間 降水量が400mmを超えたほか、西日本や東日本の太平洋側で24 時間降水量が200mmを超える大雨となりました。
さらに飛来物や倒木による高圧線の断線により、九州の広い範囲で停電が発生しています。
この台風の被害は、次のようになっています。
- 死者・行方不明6名
- 家屋の全壊・半壊39戸
参考:水害レポート2020
水害の統計
ここまで水害被害の事例について紹介してきました。
では水害により、どれほどの被害額が発生したのでしょうか?
水害による被害は統計データとして残されています。
近年、水害による被害額が上昇しているため、水害被害の実情を数字で見ていきましょう。
水害による被害額
令和になってからの水害による被害額は次のとおりです。
年 | 1年間の水害被害額 | 水害被害額上位3件 |
2019年 | 約 2 兆 1,800 億円 | ① 福島県 (水害被害額:約 6,823 億円)② 栃木県 (水害被害額:約 2,610 億円)③ 宮城県 (水害被害額:約 2,530 億円) |
2020年 | 約 6,600 億円 | ① 熊本県 (水害被害額:約 3,300 億円)② 福岡県 (水害被害額:約 630 億円)③ 大分県 (水害被害額:約 570 億円) |
水害が起こりやすい場所
日本全国どこでも水害が発生する可能性はあります。
しかしそんななかでも、水害に遭いやすい場所は次のとおりです。
- 河川の合流部
- 山を突き抜ける河川
- 川幅が狭くなるところ
- 微高地に囲まれた低地
おもに地形的な理由で水害が起こりやすいのです。
しかし『都市型氾濫』という水害の種類があるように、都市部でも水害が起こりやすくなっています。
水害が起こりやすい場所に事務所や工場がないか、今一度確認し、対策の検討材料にしましょう。
日本の水害は歴史残るほど大規模
今回は過去に発生した水害事例について紹介しました。
水害の規模は年々大きくなっており、企業の財産を守るのはもちろん、従業員の命を守るための行動が必須になっています。
近年の水害では死者数も増え、被害額も上昇傾向です。
過去事例からも、水害の恐ろしさがわかるでしょう。
これまでの水害事例を知り、参考にした水害対策をとることが重要です。
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