「災害で受け取った保険金は税金がかかるのかな」
「被災時の保険金はどのように会計処理をしたら良いのだろう」
「圧縮記帳が何かわからない」
このように災害で受け取った保険金の会計処理について悩みを抱えている企業は多いのではないでしょうか。
保険金を受け取る機会は多くないので、どのように計上すれば良いかわからず困ってしまうのも当然です。
この記事では災害で受け取った保険金に対する税金の取り扱いや会計時の処理方法について解説します。
この記事を読んだあとは、災害で受け取った保険金の課税・非課税を理解し、会計処理ができるようになります。
記事後半では圧縮記帳という繰越処理についても解説しますので、よろしければ最後までごらんください。
災害時の保険金にかかる税金は事業形態で異なる
災害で受け取った保険金にかかる税金は、以下の事業形態によって異なります。
- 個人事業形態(個人事業主)
- 法人事業形態(法人)
保険金に対してどのような税金が発生するのかを、事業者別の簡単な表にまとめました。
<災害時の保険金受け取りの課税・非課税に関する表>
個人事業主 | 法人 | |
消費税 | 非課税 | 非課税 |
所得税 | 非課税 | × |
法人税 | × | 課税対象 |
それぞれ詳しく解説するので、よろしければご参考ください。
消費税はどちらも対象外
災害で受け取った保険金は、個人事業主、法人ともに消費税の対象外です。
ただし、保険金を使用した修理は消費税の課税対象となるので、間違えないように注意しましょう。
ちなみに、修理費用は課税仕入れに該当するため、仕入税額控除の対象にすることは可能です。
個人事業主の所得税は非課税
個人事業主が受け取れる保険金には所得税法が適用されるため、原則として所得税はかかりません。
例えば台風によって看板が落下して壊れたり、浸水して機械が水浸しになったりした場合のように、建物や什器などに対する保険金は非課税の扱いとなります。これは損失した部分を補う保険金という取り扱いとして認められるためです。
しかし、商品や材料などの棚卸資産に対する保険金や休業補償のような収益の補償などには、所得税がかかります。
損失した部分を補うための扱いとして認められないため、事業所得の収入として計上する必要があるのです。
法人の法人税は課税対象
法人が受け取れる保険金は、保険差額に対して課税されます。
保険金はすべて雑収入として収益に計上します。そこから損失額や修繕にかかる関連費用を損金に算入して、差し引いた金額が課税対象です。
ちなみに、受け取った保険金で代替固定資産を取得・改良した場合には、※圧縮記帳という制度を活用できます。
※圧縮記帳:課税関係を将来に繰り延べる制度
圧縮記帳については、後述で詳しく解説いたします。
災害で受け取った保険金の処理方法
それではここから、災害で受け取った保険金の会計処理の方法を解説していきます。
具体的な仕訳方法を、個人事業主と法人で分けて解説するので、ぜひお役立てください。
個人事業主が災害で保険金を受け取った場合
個人事業主の場合は保険金を利益として計上しないため、事業主借の勘定科目を使用して以下のような仕訳をします。
日付 | 借方 | 貸方 |
4月30日 | 普通預金 600,000 | 事業主借 600,000 |
ただし、受け取った保険金で損失を補った場合、補いきれなかった分は経費として計上する必要があります。
商品や材料などの棚卸資産に対する保険金や休業補償のような収益の補償は、損失した部分を補うための扱いとして認められません。
この場合は、雑収入の勘定科目を使用した以下のような仕訳になります。
日付 | 借方 | 貸方 |
4月30日 | 普通預金 600,000 | 雑収入 600,000 |
法人が災害で保険金を受け取った場合
法人の場合は、保険金を利益として収入計上するため、雑収入の勘定科目を使用して以下のような仕訳をします。
日付 | 借方 | 貸方 |
4月30日 | 普通預金 5,000,000 | 雑収入 5,000,000 |
受け取った保険金で代替固定資産を取得・改良した場合には、この後に解説する圧縮記帳の制度を活用できます。
法人が災害で保険金を受け取ると圧縮記帳が使える
圧縮記帳とは、法人税法と租税特別措置法で規定された制度です。
固定資産を取得した際の補助金や保険金などの帳簿額を圧縮して記帳し、圧縮した金額を損金計上することで収益金と相殺できます。
圧縮記帳は、災害で受け取った保険金にも適用可能です。
課税関係を将来に繰り延べるため、その年の税額を減らして負担を軽減してくれます。
一時的に税金の負担が軽くなるので活用したい制度ではありますが、注意すべきは税金が免除されるわけではないということ。
複数年にわけて税金を納付する必要があるため、翌年以降の税金が増加します。
事業計画を考慮しながら、検討しましょう。
圧縮記帳は対象と期間が限られる
災害で受け取った保険金に圧縮記帳が認められるのは、建物・自動車などの固定資産だけです。
棚卸資産や休業補償には適用されないので、注意しなくてはなりません。
また、対象となる期間も定められており、保険金を受け取る理由の発生日から3年以内に支払が確定したものとされています。
ただし、保険金の支払を受けた事業年度に代替資産の取得ができない場合は、翌期首から原則として2年以内に取得見込みがあれば適用可能です。
その際は、その事業年度の確定した決算に特別勘定を設けて、損金の額に算入します。
圧縮記帳の限度額
受け取った保険金の圧縮記帳額は、際限なくいくらでも良いというわけではありません。決められた算定方法によって、上限が定められています。
圧縮記帳の限度額は、以下を使用して算定します。
- 被災直前の固定資産の帳簿価格
- 滅失に要した経費
- 受け取った保険金額
- 代替固定資産の取得額
圧縮記帳の限度額算定方法
圧縮記帳の限度額算定方法は以下の通りです。
圧縮限度額=※保険差益×(代替した固定資産に使用した保険金)÷《(受け取った保険金)-(滅失に要した費用)》
※保険差益=《(受け取った保険金)-(滅失に要した費用)》-(被害直前の固定資産の帳簿価格)
ちなみに、圧縮記帳は補助金でも使える制度です。災害時の補助金についてはこちらの記事で詳しく解説していますので、よろしければお役立てください。
災害で受け取る保険金の会計処理方法まとめ
今回は、災害で受け取った保険金に対する税金の取り扱いや会計時の処理方法について解説しました。
保険金は個人事業主、法人ともに原則として消費税は非課税です。
個人事業主の場合は原則として所得税はかかりません。しかしながら、棚卸資産に対する保険金や収益の補償は損失した部分を補う扱いとして認められないため、収入として計上する必要があり、課税対象となります。
法人の場合は保険金を収益として計上して、そこから損失額や修繕にかかる費用を差し引いた金額が課税対象です。
会計処理をおこなう際は、保険金は雑収入として計上します。
法人税法と租税特別措置法で規定された圧縮記帳は、課税関係を将来に繰り延べるため、その年の税額を減らして負担を軽減できる制度です。
しかしながら、税金が免除されるわけではないので、事業計画を考慮しながら検討しましょう。
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