リスクマネジメントを自社で導入したくとも、具体的な進め方がわからなければ難しいでしょう。
リスクマネジメントは、5つのプロセスにわけて実施されます。
- リスクを特定する
- リスクを分析する
- リスクに優先順位をつける
- リスクに対応する
- 対応のモニタリングと改善する
この記事では、リスクマネジメントをおこなうプロセスを解説します。
災害やサイバー攻撃などさまざまなリスクが増えているなか、リスクを未然に防いだり、被害を最小限に防いだりする対策は企業にとって必須です。
明日からリスクマネジメントを導入できるよう詳しく解説しますので、ぜひご覧ください。
リスクマネジメントとは
リスクマネジメントとは、企業が経営をおこなっていくうえで障害となるリスクを把握し、事前に対策や回避するための経営手法のことです。
詳しくは以下の記事で解説していますので、よろしければそちらをご覧ください。
→「リスク マネジメント と は わかり やすく」へ内部リンク
リスクの種類|損失のみのリスク・損失と利得のリスク
リスクマネジメントにおいて、リスクの種類を把握しましょう。
リスクの種類により、どのように対応するべきか決定するためです。
リスクは、おもに次のようににわけられます。
- 損失のみのリスク
- 利得と損失のリスク
ひとつ目の損失のみのリスクとは、偶発的な事故による財産の損壊のことです。
火災や台風、水害、地震、機械的事故、電気的事故、詐欺、盗難といった偶発的に発生する事故が該当します。
ふたつ目の利得と損失のリスクとは、損失の可能性もありますが、場合によっては利得もあるリスクのことです。
政治的・経済的要因によって引き起こされる変動や環境変化によって起こります。
景気や為替、金利、消費者の趣向変化、政情不安、政策変更、政権交代、規制の緩和などが該当します。
一言にリスクといってもリスクの種類によって、回避すべきか受け入れるべきか対応が変わります。
リスクマネジメントとリスクヘッジとの違い
リスクマネジメントと同じ意味で「リスクヘッジ」という言葉がよく使われます。
しかし厳密には意味が違いますので、それぞれの意味について理解しておきたいところ。
リスクマネジメントとは「企業活動で発生する各リスクに対し、日常的に対策を講じ、実際にリスクが発生しても適切な対処ができるようにすること」を指します。
一方、リスクヘッジとは「今後発生するであろう予想されるリスクを許容範囲に収まるよう低減させること」です。
大きな違いは、企業活動において日常的に対策をおこなっているかどうかです。
リスクマネジメントは組織的にリスクに対して備えているのに対し、リスクヘッジには組織的に備える意味は含まれていません。
リスクヘッジはもともと、資産運用などの金融用語として使われているため、リスクマネジメントとは意味が異なります。
リスクマネジメントとクライシスマネジメントとの違い
リスクヘッジと同様に、リスクマネジメントと似た意味でクライシスマネジメントが使われます。
リスクマネジメントには、リスクを発生させないようにしたり、リスクを回避したりする対策も含まれます。
一方でクライシスマネジメントとは、リスクが発生する前提で危機的事態が発生した際の対策を検討しておくことです。
つまり、クライシスマネジメントは「リスクは必ず発生するもの」という考えが前提。
リスクマネジメントには「危機を未然に防ぐ」という考えがあるため、前提とする考え方が異なるのだと覚えておきましょう。
リスクマネジメントにおけるプロセス5ステップ
リスクマネジメントをおこなうプロセスは、次の5ステップです。
- リスクを特定する
- リスクを分析する
- リスクに優先順位をつける
- リスクに対応する
- 対応のモニタリングと改善する
それぞれのステップについて、詳しく見ていきましょう。
リスクを特定する
まずはリスクを特定することから始めます。
重要なのは、リスクをたくさん挙げること。
リスクを挙げるには、次のような方法があります。
- 関係者でブレーンストーミングする
- アンケートを実施する
- 財務・会計データから、損失のみのリスクか利得と損失のリスクを予想する
- 市場予測を数パターンおこない、リスクの程度を推測する
- 実態調査などからリスクを拾いあげる(例:企業のリスクマネジメントおよびクライシスマネジメント実態調査 2021年版)
考えられるリスクはさまざまです。
限られた人数だけでおこなうのではなく、なるべくたくさんのリスクを挙げるようにしましょう。
そして挙げたリスクは、リスク管理シートに記載していきます。
リスクを分析する
考えられるだけリスクをリストアップできたら、予想されるリスクを分析します。
分析結果によって、対策を決めるのが目的です。
予想されるリスクが顕在化したとき「影響の大きさ」と「発生確率」の2つを、それぞれ特定します。
このときに重要なのが、可能な限り定量化することです。
定量的にリスクを分析することで、のちにおこなう対応の優先度や対策の決定がしやすくなります。
リスクを定量化するのが難しいなら、リスクを「大」「中」「小」に分類するだけでもおこないましょう。
2つをかけ合わせた結果、それぞれのリスクがどのくらい重大なものかを次のステップで比較します。
リスクに優先順位をつける
リスクの分析を終えたら、分析結果をもとに一覧として可視化しましょう。
予想されるリスクに優先順位をつけやすくするためです。
わかりやすく一覧化できるよう、マップ化することをおすすめします。
「影響の大きさ」を縦軸、「発生確率」を横軸にして、リスクマップを作成。
こうすることで、影響度が大きくかつ発生確率も高い重大なリスクが明らかになります。
リスクに対応する
対策すべき優先順位の高いリスクが判明したら、具体的な対策を検討しましょう。
対策を検討するには、次のような考え方が参考になります。
- 回避:活動をやめ、リスクを遮断する
- 損失防止:発生しないよう予防する
- 損失削減:リスク発生時の損失を抑える
- 分離・分散:リスクの原因が集中するのを防ぐ
必ずしも、リスクが起こってから対策する必要はありません。
予想されるリスクを未然に防ぐのも対策のひとつです。
またリスクの発生が避けられないとわかれば、分散してリスクの影響度を軽減することも検討できます。
対応のモニタリングと改善する
リスクマネジメントを実施していても、忘れがちなのがモニタリングと改善です。
予想されるリスクの対策後、効果測定をおこないましょう。
リスクマネジメントは一度おこなって終わりではありません。
対策の効果測定では、次のようにモニタリングをおこないます。
- リスクの軽減はどのくらいできたか
- スムーズに対応できたか
- 対策の運用にトラブルはなかったか
対策の反響や効果、改善点がないか確認します。
改善が必要であれば、より質の高い対策を検討し実施します。
このようにリスクマネジメントは一度実施して終わりではなく、日常的におこなうものです。
形だけリスクマネジメントをおこなうのではなく、自社の状況にあった対策に柔軟に変えていきましょう。
リスクマネジメントの取り組みは重要性を増している
近年、リスクマネジメントの取り組みは企業にとって重要性が高まっています。
企業を取り巻くリスクが多様化、かつ複雑化しているためです。
企業の経営をおびやかすようなリスクが増えています。
- 経営戦略リスク
- 財務リスク
- ハザードリスク
- 法違反のリスク
- 労務のリスク
大きくわけただけでも、上記のようなリスクが考えられます。
それぞれのリスクについては、以下の記事で詳しく解説しています。
よろしければ、そちらもご覧ください。
リスクマネジメントプロセスにおけるISMS
リスクマネジメントにはISMSと呼ばれるものがあります。
ISMSとは「ISMS(Information Security Management System:情報セキュリティマネジメントシステム)」の略です。
わかりやすくいうと情報セキュリティを強化して、サイバー攻撃などのリスクを低減することを指します。
情報セキュリティを強化するとき、次の3要素を基準にするとわかりやすいでしょう。
- 機密性:許可されていない者は、情報にアクセスできない状態
- 完全性:情報が破壊・改ざん・消去されていない状態
- 可用性:必要な情報が、必要なときにアクセスできる状態
情報セキュリティは、インターネットやITが普及した現代において必須です。
リスクマネジメントを実施する際には、情報セキュリティも強化しましょう。
リスクマネジメントはホワイト企業認定審査にも組み込まれている
今回は、リスクマネジメントをおこなうプロセスについて説明しました。
繰り返しになりますが、リスクマネジメントのプロセスは次の5ステップにわけられます。
- リスクを特定する
- リスクを分析する
- リスクに優先順位をつける
- リスクに対応する
- 対応のモニタリングと改善する
企業が経営をおこなっていくうえで、さまざまなリスクに対応できるよう組織的に管理し、調整していくことが求められます。
ホワイト企業認定審査には、リスクマネジメントがおこなわれているかどうかも審査項目に含まれているほどです。
それほどリスクマネジメントは注目されています。
健全な経営をおこなっていくためにも、リスクマネジメントの導入を進めていきましょう。
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