「リスクマネジメントの導入を検討している。しかし導入にあたって、どのようにリスクマネジメントを進めたらよいのかわからない」と困っている方もいるでしょう。
リスクマネジメントを導入するのなら、フレームワークを活用しましょう。
フレームワークを活用することで、何が課題で、何が必要なのか論理的に導きだせるためです。
フレームワークとは、直訳すると「枠組み」のこと。
ビジネスにおいては意思決定や分析、問題解決などの枠組みを指します。
この記事では、リスクマネジメントにおけるフレームワークについて解説します。
リスクマネジメントフレームワークを活用すれば、自社でもリスクマネジメントを導入する考え方が理解できます。
リスクマネジメント導入における、全体像の把握に役立てば幸いです。
リスクマネジメントとは
リスクマネジメントとは、リスクを組織的に管理し、調整を図るプロセス全般を指します。
一般的にリスクマネジメントというと、想定されるリスクを管理し、リスクによって発生する損失の回避や低減を図るための取り組みを指すことが多いのです。
リスクマネジメントについては、企業リスクマネジメントの必要性|企業が抱えるリスクを紹介で詳しくわかりやすく解説しています。
よろしければ、こちらもご覧ください。
リスクマネジメントの定義
リスクは特定の部署のみで対応するのが難しくなっています。
その理由は、経営を取り巻くリスクが多様化かつ複雑化しているからです。
経営を取り巻いている環境は変化が激しく、リスクとなる要因も増え続けています。
そのためリスクマネジメントの定義は「事前に測定できる好ましくないリスクを想定する」ことです。
そしてそのリスクに対して有効な策を実行し、対応していくことが求められています。
リスクとは?種類別に紹介
企業の経営を取り巻くリスクとは、どのようなものがあるのでしょうか?
リスクとは
「将来に対する不確かさと、そのことが及ぼす影響のこと」
引用:リスクとは何? Weblio辞書
という記述が一般的です。
日本では「危険性」という意味で解釈されることが一般的です。
しかし海外では、リスクは必ずしも危険なものだけではないとされています。
リスクとは次の2つの種類に分けられます。
- 損失のみのリスク
- 利得と損失のリスク
ひとつ目の「損失のみのリスク」とは、火災や台風、水害、地震などの偶発的な事故による財産の損壊のことです。
機械的事故や電気的事故、詐欺、盗難といった財産の損壊も「損失のみのリスク」に該当します。
経営者や従業員の死亡、障害などによる人的リスク、賠償責任、製造物責任など、偶発的に起こり、損失のみが与えられることが「損失のみのリスク」といえます。
ふたつ目の「利得と損失のリスク」とは、政治的・経済的要因が引き起こす変動や環境変化によって起こるリスクのことです。
景気や為替、金利、政策変更、政情不安、政権交代、消費者の嗜好変化、規制の緩和などが該当します。
場合によっては損失になりますが、同時に利得になることもあるでしょう。
アメリカの経済学者フランク・ナイトは
個別的には不確実であっても,大数法則的に数量表現できるものを,ナイトはリスクと定義
引用:フランク・ナイトの不確実性の経済学
しています。
わかりやすく言うと「リスクは不確実な要素でも、事前に測定できるもの」ということです。
リスクは損失のみではなく、利得がある場合もあります。
損失となる事態を引き起こさないためにも、事前にどのように対策するかが重要です。
リスクマネジメントのフレームワーク
リスクマネジメントの概要について理解したところで、フレームワークを見ていきましょう。
リスクマネジメントフレームワークとは、組織や情報システムにおける情報セキュリティリスクの管理方法を示したものです。
リスクマネジメントフレームワークは、次のような7ステップでおこないます。
- リスクマネジメントのフレームワーク準備
- 情報システムの分類
- セキュリティ管理策の選択
- セキュリティ管理策の実装
- セキュリティ管理策のアセスメント
- 情報システムの運用認可
- セキュリティ管理策の監視
それぞれのステップについては、Risk Management Framework for Information Systems and Organizationsを参照し解説しています。
リスクマネジメントのフレームワーク準備
まずはリスクマネジメントにおけるフレームワークを準備します。
フレームワークの準備では、組織のリスクマネジメント戦略を決め、組織全体のリスクアセスメント(リスク評価)をします。
そしてシステムのリスクアセスメント(リスク評価)もおこない、セキュリティの要件を決定することで、フレームワークを準備するのです。
情報システムの分類
リスクマネジメントのフレームワーク準備ができたら、次は情報システムの分類します。
まずはシステムのタイプを分類し、システムに求められるセキュリティの分類をおこないます。
セキュリティの分類は、次の観点から高・中・低と決めます。
- 機密性
- 完全性
- 可用性
これらを分類することで、のちの手順であるセキュリティ管理策を決定する基準とできます
セキュリティ管理策の選択
情報システムの分類でおこなったセキュリティの分類をもとに、管理策を決定します。
セキュリティ管理策には、おもに次の2つがあります。
- ベースライン管理策の選択
- 組織作成管理策の選択
「ベースライン管理策の選択」とは、トップダウン的に定めたセキュリティ管理策の中から選択する方法です。
わかりやすく言うと、簡単なリスクアセスメント(リスク評価)をし、それに見合った管理策を適用するということです。
要求するセキュリティ要件が低い組織や部門に適用できます。
一方で「組織作成管理策の選択」とは、組織固有の要件をボトムアップ的にセキュリティ管理策を選択する方法です。
実際にセキュリティ管理をおこなう部署や部門の意見を吸い上げ、セキュリティ要件に合った管理策を決めます。
セキュリティ管理策の実装
セキュリティ管理策を決定したら実装に移ります。
セキュリティ管理策を実装する際には、実装した情報システムと管理策の使用方法を文書化する必要があります。
セキュリティ管理策の変更内容を実装状況に基づいて残すことで、管理性を向上させるためです。
いざセキュリティ管理をしようにも、何をどうしたのかがわからなければ、適切な管理ができません。
セキュリティ管理策の使用方法などを、必ず文書で保管しておきましょう。
セキュリティ管理策のアセスメント
セキュリティ管理策が実装されたら、アセスメント(リスク評価・分析)をします。
適切なアセスメント手順を用いて、どの程度正しく導入されているのかや、どの程度意図したとおりに運用されているのか、セキュリティ要件を満たしているのかを把握するためです。
その結果、不備があれば是正します。
是正されたセキュリティ管理策は再度アセスメントが必要です。
ここで適正なアセスメントがおこなわれないと、目標としたセキュリティ管理策が達成できません。
またアセスメントを怠ると、大きな事故につながる可能性もあります。
希望した結果が出ているのか、適合性の観点からセキュリティ管理策をアセスメントしましょう。
情報システムの運用認可
情報システムを運用するうえで、運用責任者を置いたほうがよいでしょう。
すべての情報システムを運用できるとは限らないためです。
いくら情報システムの導入をしたくても、システムを導入することによってリスクが大きくなっては本末転倒です。
例えば、情報システムの運用から発生する組織の業務や資産、個人、他の組織、国家に対するリスクなどです。
これらを適正に評価し、リスクを許容できるかどうかを判断しなければいけません。
運用を検討する情報システムによって発生するリスクが許容範囲か判断するため、運用責任者は必要です。
セキュリティ管理策の監視
最後にセキュリティ管理策の監視があります。
監視する理由は、長期にわたって定めたセキュリティ管理策を維持するためです。
多くの企業はリスクマネジメントを導入したものの、監視を忘れてしまいます。
セキュリティ管理策の監視には、次のようなものがあります。
- セキュリティ管理策の有効性の評価
- システムおよび運用環境への変更の文書化
- リスク評価と影響分析の実施
- システムのセキュリティとプライバシーの姿勢の報告
- 継続的なシステムおよび関連するセキュリティ管理策
他には脅威、脆弱性、テクノロジー、および任務/業務機能の変化にシステムが適応などが挙げられます挙げられます
噛み砕いて言うと、セキュリティ管理策が適切に運用された結果、効果が出ているのかを監視します。
効果が出ているのなら、効果を維持します。
改善点が見つかったのなら改善し、さらなるリスクに備えます。
このようにリスクマネジメントは継続して監視し、適切に運用されているかを常に見直しましょう。
リスク管理はフレームワークを活用して導入する
今回は、リスクマネジメントにおけるフレームワークについて説明しました。
リスクマネジメントフレームワークは、7ステップでおこないます。
- リスクマネジメントのフレームワーク準備
- 情報システムの分類
- セキュリティ管理策の選択
- セキュリティ管理策の実装
- セキュリティ管理策のアセスメント
- 情報システムの運用認可
- セキュリティ管理策の監視
リスクマネジメントはどのように進めるのかイメージしづらいでしょう。
フレームワークをステップで解説しても、一度ではわからないことが多いはずです。
まずはリスクマネジメントをどのようにおこなうのか、優先順位をつけるところから始めてみませんか?
それにより、どこをセキュリティ管理すべきか見えやすくできます。
それでも難しいと感じた場合は、当社までご連絡ください。
リスクマネジメントの導入をお手伝いいたします。
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