リスクマネジメントを調べていても、一言では説明しきれないことが多いでしょう。
さらには「リスクアセスメント」という似ている言葉も出てくるため、具体的になにを指しているのかわかりにくいかと思います。
リスクアセスメントとは、リスクマネジメントにおけるプロセスの一部です。
リスクマネジメントのなかにリスクアセスメントがある、といえるでしょう。
この記事では、リスクマネジメントとリスクアセスメントの違いを解説します。
リスクアセスメントのほか、リスクマネジメントの類語も紹介します。
リスクマネジメントについて理解が深まり、企業価値を高めるお手伝いになれば幸いです。
リスクマネジメントとは
リスクマネジメントとは、リスクを組織的に管理し、調整を図るプロセス全般を指します。
一般的にリスクマネジメントというと、想定されるリスクを管理し、リスクによって発生する損失の回避や低減を図るための取り組みを指すことが多いのです。
リスクマネジメントの国際規格である「ISO31000」が2009年に発行され、2018年には「ISO31000:2018」に改定されました。
リスクマネジメントは「リスク」を「マネジメント」する活動です。
事前にリスクを回避するための対策と、リスクが発生したときの対策という2つの側面があります。
詳しくは以下の記事で解説していますので、よろしければそちらをご覧ください。
→「リスク マネジメント と は わかり やすく」
企業におけるリスクマネジメントの必要性
企業の経営において、リスクマネジメントの必要性は高まっています。
企業を取り巻くリスクが多様化・複雑化しているためです。
たとえば、考えられるリスクにアウトソーシング先の業務停止がおよぼす影響があります。
一部の業務をアウトソーシングすれば効率的に経営が進みます。
しかしアウトソーシングした先に企業がなんらかの理由で業務停止した場合、自社への影響は大きいでしょう。
最悪の場合、自社の業務が停止してしまうリスクもあります。
とはいえ、業務のアウトソーシングをすべて辞めるのは現実的ではないでしょう。
そのため企業にとって、リスクマネジメントの重要度が高まっています。
企業を取り巻くリスクとは
企業を取り巻くリスクには、次のようなものが考えられます。
- 経営戦略リスク
- 財務リスク
- ハザードリスク
- 法違反のリスク
- 労務のリスク
経営に関わる戦略的なリスクや保有する資産、負債の価値、自然災害、事故など、一言では説明しきれません。
それほど多くのリスクを企業は抱えているといえます。
重要なのは、企業が組織的にリスクマネジメントに取り組むことです。
企業におけるリスクマネジメントの必要性については、以下の記事で詳しく解説しています。
よろしければ、ぜひご覧ください。
リスクアセスメントとは?簡単に解説
リスクアセスメントとは、リスクマネジメントにおけるプロセスの一部です。
具体的には次のようなプロセスが、リスクアセスメントです。
- リスクを特定する
- リスクを分析する
- リスクに優先順位をつける
リスクマネジメントでは、これらのプロセスのあと「リスクに対応する」「対応のモニタリングと改善する」プロセスがあります。
リスクに対して対策をおこなうには、リスクアセスメントの工程を経なければいけません。
リスクアセスメントは、企業が適切なリスクマネジメントをおこなうのに重要な工程です。
リスクマネジメントにおけるリスクアセスメントのプロセス
リスクアセスメントには、3つのプロセスがあると紹介しました。
では実際にどのようなことがおこなわれているのでしょうか?
- リスクを特定する
- リスクを分析する
- リスクに優先順位をつける
これらリスクアセスメントのプロセスをひとつずつ見ていきましょう。
より詳しくリスクマネジメントのプロセスが知りたい方は、以下の記事で詳しく解説しています。
よろしければ、ぜひご覧ください。
リスクを特定する
リスクアセスメントは、リスクを特定するところからです。
やみくもに対策してもリスクマネジメントの効果は得られないためです。
重要なのは、とにかくたくさんのリスクを挙げること。
関係者が集まり、ブレーンストーミングなどで想定できるリスクを抽出する方法が効果的です。
ほかには、次のような方法でリスクを抽出できます。
- アンケートを実施する
- 財務・会計データから、損失のみのリスクか利得と損失のリスクを予想する
- 市場予測を数パターンおこない、リスクの程度を推測する
- 実態調査などからリスクを拾いあげる(例:企業のリスクマネジメントおよびクライシスマネジメント実態調査 2021年版)
適切なリスクマネジメントを実施するためにも、リスクの洗い出しは重要です。
ここではたくさんのリスクを挙げることに注力しましょう。
リスクを分析する
たくさんのリスクを挙げられたら、洗い出したリスクを分析します。
のちにどのような対応策をおこなうかの判断材料になるためです。
分析する基準はおもに2つ。
リスクが顕在化したときの「影響の大きさ」と「発生確率」をそれぞれ特定しましょう。
2つをかけ合わせた結果、それぞれのリスクがどのくらい重大なものかを比較します。
そして比較する結果は、可能な限り定量化するのが重要です。
定量化することで、のちにおこなう対応の優先度や対策の決定がしやすくなります。
とはいえ、なかには定量化するのが難しい場合もあるでしょう。
そのときはリスクがおよぼす重大さを「大」「中」「小」に分類する方法でおこないましょう。
リスクに優先順位をつける
すべてのリスクに対応することはできないため、優先的にどのような対策をおこなうのか決めます。
具体的な方法としては、リスク分析結果を一覧として可視化します。
そして可視化したリスク分析結果を、リスクマップを作成して見やすいようにします。
リスクマップにするコツは「影響の大きさ」を縦軸、「発生確率」を横軸にすること。
そうすることで、どのリスクが最も重大なリスクか明らかになります。
最優先で対策しなければいけないのは、影響度が大きくかつ発生確率が高いものです。
優先的に対策する必要のあるリスクを特定するためにも、リスクマップを作成して優先順位をつけましょう。
リスクマネジメントの類語と違い
リスクマネジメントには、リスクアセスメント以外にも類語があります。
- リスクヘッジ
- クライシスマネジメント
同じ意味で使われていることがありますが、厳密には意味が違います。
それぞれの意味について理解できるよう、簡単に説明します。
リスクヘッジ
リスクヘッジとは、起こりうるリスクを予測し、リスクに対応できる体制を備えることです。
もともとは金融分野で使われている言葉です。
資産運用などで、資産価値の下落をできるだけ最小に抑えるための方法です。
たとえば先物取引に資産を回すといった手法がリスクヘッジにあたります。
仮に株式の購入で損失を出してしまったとしても、先物市場で先に買ったものをあとで安く買い戻せば、損失を補填できます。
このように「今後発生するであろう予想されるリスクを許容範囲に収まるよう低減させること」がリスクヘッジです。
クライシスマネジメント
クライシスマネジメントはリスクマネジメントと意味が似ているため、混同して使われてしまいます。
しかし厳密には意味が違います。
リスクマネジメントとは「企業活動で発生する各リスクに対し、日常的に対策を講じ、実際にリスクが発生しても適切な対処ができるようにすること」を指します。
リスクを組織的に管理し、調整を図るプロセス全般がリスクマネジメントです。
一方でクライシスマネジメントは「危機は必ず発生する」という前提のもとで危機管理をおこなうこと。
大きな違いは「危機を未然に防ぐ考え」「リスクは必ず発生する考え」という前提にあります。
リスクマネジメントはリスクを回避する手法があるのに対し、クライシスマネジメントはリスクを回避する手法を前提にしていないのです。
このように似た意味として使われていても考え方が根本的に違うため、それぞれの意味について理解しておきましょう。
リスクマネジメントにおけるリスクアセスメントは基本的なプロセス
今回はリスクマネジメントとリスクアセスメントの違いについて説明しました。
繰り返しになりますが、リスクアセスメントはリスクマネジメントにおけるプロセスの一部です。
- リスクを特定する
- リスクを分析する
- リスクに優先順位をつける
このようなプロセスがリスクアセスメントと呼ばれます。
そのリスクは発生する可能性が高いのか、どのくらい確かなのか、どのような影響をもたらすのか、影響は広まってしまうのかなど、適切な対応ができるようリスクアセスメントは重要です。
リスクマネジメントにおける基本的なプロセスを理解し、リスクアセスメントをおこなっていきましょう。
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