「防災の救助に関する法律には何があるのだろう」
「災害時に企業でできる救助活動はあるのだろうか」
このように防災における救助活動について悩みを抱えている企業は多いのではないでしょうか。
この記事では、災害救助法について解説します。災害救助法は企業とも関わりがあるため、この記事を読んだあとは災害救助法について理解し、もしもの時に役立てられるようになります。
記事後半では防災として企業ができる救助活動についても解説するので、ぜひ最後までごらんください。
自主防災についてはこちらで詳しく解説しています。よろしければお役立てください。
※自主防災に関する記事
応急的な救護を目的とした災害救助法
ここからは『災害救助法』について、以下を解説します。
- 災害救助法の適用決定
- 災害救助法の内容
- 企業と災害救助法の関わり
よろしければご参考ください。
災害救助法の適用決定は都道府県
災害救助法は、1947年に制定された災害時の救助に関する法律です。1946年に発生した『南海地震』をきっかけとして、制定されました。国が地方公共団体や国民などと協力して応急的に必要な救助をおこない、被災者の保護や社会秩序の保全に努めます。
災害救助法と似た名前の法律に『災害対策基本法』があります。
災害対策基本法:災害の予防から復旧・復興の各ステージを網羅的にカバーする法律です。災害の段階に応じて、個別法で対応する仕組みとなっています。
災害対策基本法のなかでも、災害発生後の応急救助の段階に位置するのが災害救助法です。災害被害の規模などに応じた一定の被災基準をこえると適用されます。つまり、災害対策基本法の一部に、災害救助法が存在しているのです。
国がおこなう応急的な救助である災害救助法の適用決定は、都道府県がおこないます。市町村単位でとりまとめた被害状況の報告と適用申請を都道府県がうけ、決定をおこなった後に内閣府へ情報提供をおこなう流れです。
防災に関する法律については防災における法律の基本|企業の義務を理解して取り組みに活かすの記事で詳しく解説していますので、よろしければお役立てください。
炊き出しや避難所の設置などを実施
災害救助法が適用される目安は、住宅の被害状況や住民の命や体に危険が生じているかです。
目安を基準にして災害救助法が適用されれば、例えば以下がおこなわれます。
- 避難所の設置
- 被災者の救出
- 炊き出しその他による食品の給与
- 飲料水の供給
- 応急仮設住宅の供与
- 日常生活に必要な日用品の貸与など
災害救助法が適用されていなければ、上記に要した費用は市町村が支払います。しかしながら、災害救助法が適用されれば、これらの費用は国庫などから支援金が出るのです。
企業と災害救助法の関係
災害救助法のなかには、被災した企業が復旧するための救助も含まれています。
具体的には、企業に向けて以下の対策がおこなわれます。
- 特別相談窓口の設置:日本政策金融公庫や商工会議所などに、特別相談窓口が設置される。
- 災害復旧貸付の実施:被災した中小企業や小規模事業者に対し、運転資金などを融資する。
- セーフティネット保証4号の適用:被災により売上が減少している中小企業や小規模事業者に対し、一般保証とは別枠の限度額で融資額の100%を保証する。
- 返済条件緩和などの実施:既往債務の条件変更などをおこなう要請ができる。
- 小規模企業共済『災害貸付』が適用:被災した小規模企業共済契約者に災害時貸付が適用される。
「国が応急的に必要な救助をおこなうための法律なら、企業には関係ない」と思うかもしれません。しかしながら、災害救助法が適用されれば、このように中小企業支援の実施もおこなわれるため、無関係ではないのです。
企業防災における救助活動
災害救助法では国などが企業の復旧を手助けしてくれますが、もちろん企業防災における救助活動を疎かにしてはいけません。企業には、そこで働く従業員や来客中のお客様、取引先の方などを守る必要があります。
ここからは、企業防災の救助活動について以下を解説します。
- 企業ができる災害時の救助対応
- 防災として備えられること
よろしければご参考ください。
3日間の従業員滞在と備蓄
企業防災における救助活動と聞くと、災害が起きた時に備えたり怪我をした人を手当したりするイメージをお持ちの方は多いでしょう。しかし、企業防災における救助は『災害を防ぐ』だけではありません。
『被害の拡大を防ぐ』のも救助活動のひとつです。具体的には、従業員を3日間企業に滞在させます。
3日間という数字には『72時間の壁』が関係しています。72時間を超えると被災者の生存率が著しく低下すると言われているため、災害救助の目安となっているのです。
生存率については、過去の事例からも見て取れます。例えば、国土交通省近畿地方整備局がまとめたデータによれば、阪神・淡路大震災の震災当日の救出率は75%でした。続いて、2日目は24%、3日目は15%、そして4日目には5%まで救出率が低下しています。
人命救助が落ち着かない3日間の間に従業員が帰宅すると、帰宅途中に救助活動を妨げる可能性があります。それどころか、帰宅中に被害に遭えば救助される側になることも考えられるのです。
内閣府が発表している『大規模地震の発生に伴う帰宅困難者対策のガイドライン』でも、人命救助が落ち着く災害発生後の3日程度、企業は従業員の一斉帰宅を抑制するよう推奨しています。ともなって、企業は従業員が滞在しても問題ない量の備蓄をしておく必要があるのです。
防災に備蓄に関する法律については企業防災の備蓄品|もしもにそなえてできることで詳しく解説していますので、よろしければお役立てください。
防災訓練での救助活動の実施
災害発生時に被害の拡大を防ぐための救助活動以外にも、企業防災として備えられることがあります。それは、防災訓練の実施です。
防災訓練では、災害発生直後を想定して以下をおこないます。
- 安全確保(避難誘導)
- 状況確認(初期消火・人命救助)
- 安否確認
- 緊急災害対策本部の設置
- 帰宅対応
上記のなかでも、避難誘導や初期消火、人命救助の訓練を徹底しておきましょう。もしもの時に、従業員の命を守ることにつながります。
包帯や消毒液といった救急セットやAEDを用意するだけでなく、救命講習もうけておきましょう。人命救助は一朝一夕では身につきません。繰り返して体が覚えるくらいにおこなうことで、災害時に慌てず対応できるようになります。
救命講習は、消防署や日本赤十字社などが実施しています。参考に日本赤十字社のホームページを記載しておきますので、よろしければお役立てください。
(日本赤十字社:講習リンク先一覧)
防災訓練についてはもしもに役立つ防災訓練|災害に強い企業を目指すで詳しく解説していますので、よろしければお役立てください。
防災の救助活動を知り備えるのが大切
今回は防災における救助について紹介しました。
災害救助法は、応急的な救護を目的として制定された法律です。国が地方公共団体や日本赤十字社、その他の団体や国民と協力して、応急的に必要な救助をおこないます。
適用されれば相談窓口の設置や運転資金の融資などが実施されるので、災害救助法は企業とも無関係ではありません。
企業ができる災害時の救助活動は、従業員を3日間滞在させることです。生存率が著しく低下する72時間は、救助活動の邪魔をして被害を拡大させないために、従業員の帰宅対応は慎重におこないましょう。
普段から災害を意識し、防災に力を入れるのも忘れてはいけません。応急救護や備蓄品の準備など、もしもの時に慌てないために防災訓練は徹底的におこないましょう。
避難所生活についてはこちらの記事が役立ちます。よろしければお役立てください。
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