「自社でBCP策定することを検討している。しかしなにから手をつけていいのかわからない」と困っている方もいるでしょう。
BCPとは緊急事態に直面した際、中核となる事業の継続、もしくは早期復旧を目的に作成される事業継続計画のことです。
そんな事業継続計画の策定手順は、次の7ステップです。
- 基本方針の決定
- 自社の中核事業の特定
- リスクの洗い出し・評価し、優先順位をつける
- 復旧時間の目標設定
- 具体的にBCP策定する
- BCP発動基準を明確にする
- BCPの体制を整え、定期的に見直す
この記事では、BCP策定における具体的な手順について解説します。
将来にわたって、企業が安全に発展していくのにBCP策定は重要です。
自社でもBCP策定に取り組めるよう、お役に立てれば幸いです。
BCPとは?わかりやすく解説
BCPとは「Business Continuity Plan」の略です。
日本語では「事業継続計画」と呼ばれています。
自社に緊急事態が発生した際、損害を最小限に抑えながら、中核となる事業の継続もしくは早期復旧することを目的に計画します。
計画する内容は、対象とする中核事業の決定や事業継続のための方法など、多岐にわたります。
自然災害などの緊急時では、冷静な判断ができないことも。
そうした場合に備え、企業はBCPを策定し、事業継続もしくは早期復旧のために準備します。
企業規模別BCPの策定状況
BCP策定は企業にとって重要な取り組みです。
そんなBCPの策定状況は、令和元年度 企業の事業継続及び防災の取組に 関する実態調査によると、次のとおりです。
▶大企業
策定済み | 策定中である | 策定を予定している(検討中含む) | 予定はない | 事業継続計画(BCP)とは何かを知らなかった | その他・無回答 | |
平成19年度 | 18.9% | 16.4% | 29.1% | 12.7% | 22.7% | 0.3% |
平成21年度 | 27.6% | 30.8% | 16.9% | 11.1% | 12.0% | 1.5% |
平成23年度 | 45.8% | 26.5% | 21.3% | 5.7% | 0.3% | 0.4% |
平成25年度 | 53.6% | 19.9% | 15.0% | 8.3% | 2.2% | 1.0% |
平成27年度 | 60.4% | 15.0% | 16.4% | 5.1% | 0.8% | 2.3% |
平成29年度 | 64.0% | 17.4% | 12.2% | 4.3% | 0.9% | 1.2% |
令和元年度 | 68.4% | 15.0% | 12.5% | 2.5% | 0.9% | 0.6% |
▶中堅企業
策定済み | 策定中である | 策定を予定している(検討中含む) | 予定はない | 事業継続計画(BCP)とは何かを知らなかった | その他・無回答 | |
平成19年度 | 12.4% | 3.4% | 12.8% | 8.8% | 61.2% | 1.3% |
平成21年度 | 12.6% | 14.6% | 15.0% | 10.3% | 45.3% | 2.2% |
平成23年度 | 20.8% | 14.9% | 30.7% | 19.7% | 13.3% | 0.7% |
平成25年度 | 25.3% | 12.0% | 18.1% | 24.8% | 17.3% | 2.6% |
平成27年度 | 29.9% | 12.1% | 30.2% | 18.3% | 7.0% | 2.5% |
平成29年度 | 31.8% | 14.7% | 27.7% | 17.9% | 6.4% | 1.5% |
令和元年度 | 34.4% | 18.5% | 22.3% | 13.0% | 8.7% | 3.1% |
参考:令和元年度 企業の事業継続及び防災の取組に 関する実態調査
大企業においてBCP策定は進んでいますが、中堅企業では進んでいない状況です。
しかし年々BCP策定済みの比率が大きくなっていることから、大企業を中心に企業全体のBCP策定は進んでいるといえます。
BCM・防災との違い
BCP策定において、BCMという言葉が使われます。
しかしBCPとBCMはどのように違うのか、わからない方も多いでしょう。
BCPは事業継続計画のこと。
一方BCMは「事業継続マネジメント」のことを指し「Business Continuity Management」の頭文字を取った略語です。
BCPは事業継続に向けた計画であるのに対し、BCMはその体制をマネジメントするのが目的です。
似ているようで目的も意味も違います。
またBCMと同じく、防災との違いもわかりづらいでしょう。
防災とは災害を未然に防ぎ、人や建物、資産への被害拡大を防ぐのが目的です。
一方BCPは企業が緊急事態に直面した際の事業継続や復旧に重点を置いています。
目的や対象が違うため、BCP・BCM・防災の違いを理解しておきましょう。
BCP策定手順を7ステップで解説
BCPとはどのようなものかわかりました。
ではどのようにして、BCPは策定されるのでしょうか?
BCP策定手順は、次の7ステップです。
- 基本方針の決定
- 自社の中核事業の特定
- リスクの洗い出し・評価し、優先順位をつける
- 復旧時間の目標設定
- 具体的にBCP策定する
- BCP発動基準を明確にする
- BCPの体制を整え、定期的に見直す
基本方針の決定
BCP策定において、まずは基本方針を決定しましょう。
自社にとって重要なものを明確にすることが、BCP策定において重要です。
経営者を中心にBCP策定メンバーを決定し、自社の事業と自社を取り巻く環境を把握します。
そのうえで自社が果たすべき責任や、重要な項目を明確にします。
自社の中核事業の特定
基本方針を策定したら、自社の中核事業を特定します。
中核事業の継続・早期復旧は、企業存続のためには重要なためです。
中核事業は、ほかの事業よりも優先して継続・復旧の対象になります。
中核事業を特定するには、次の項目を判断基準にできます。
- 自社の売上にもっとも貢献している事業
- 作業の遅延がもたらす損害が、もっとも大きい事業
- 市場シェアや自社の評判を維持するために重要な事業
これらを基準に、中核事業を判断しましょう
リスクの洗い出し・評価し、優先順位をつける
中核事業を特定した次は、リスクの洗い出し・評価をおこないます。
事業継続を妨げるようなリスクはなんなのか、どのような場合に起こるのかなど、考えられるリスクを可能な限り挙げます。
例えば、次のようなリスクが考えられます。
- 自然災害
- システムエラー
- 事故
- 情報漏えい
- サイバー攻撃
- 法律違反
そして挙げたリスクが自社にどのような影響を与えるのか、分析・評価しましょう。
リスクの分析・評価が終わったら、考えられるリスクに対応する優先順位をつけます。
優先度の高いリスクから、対策を検討します。
リスクに優先順位をつける際、ビジネスインパクト分析を用いるのも有効です。
限られたリソースを有効活用するため、優先度の高いリスクに絞り対策する方法も検討しましょう。
ビジネスインパクト分析については「BCP 策定 ガイドライン」でも解説しています。
よろしければそちらも参考にしてください。
復旧時間の目標設定
優先して対策すべきリスクを把握したら、リスクが起こった際の目標復旧時間を設定しましょう。
復旧の遅れにより、取引停止や事業継続に影響してしまうためです。
例えばリスクが発生し商品供給ができなくなった場合、一定時間以上経つと取引先は別の供給先を検討するかもしれません。
そうなると重要な取引先を失ってしまうため、事業継続に支障が出ます。
そのためBCPのなかで、復旧時間の目標設定はもっとも重要です。
取引先が許容できる時間内に復旧できるよう、目標とする復旧時間を設定しましょう。
具体的にBCP策定する
具体的なBCP策定をおこないます。
ここでは誰が指揮をとり、誰がその指示を受けて行動するのかなど、細かく決める必要があります。
なぜなら、緊急時に個々がとっさに行動するのは難しいためです。
例えば自然災害が発生したとき、個々の具体的な内容を決めておかないと的確な行動は難しいでしょう。
そのため事前に細かい部分まで、BCP策定をおこないましょう。
BCP発動基準を明確にする
必ずBCPの発動基準を明確にする必要があります。
発動基準があいまいだと、損害が大きくなってしまう可能性があるためです。
BCP発動基準があいまいなまま緊急事態が発生すると、BCP発動に時間がかかります。
そうなると対応が遅れ、企業が受ける損害が大きくなります。
事業の継続に大きな影響を与えてしまうかもしれません。
BCP発動時の体制や人員など、BCP発動に関わることはあらかじめ決めておきましょう。
BCPの体制を整え、定期的に見直す
企業の複数部門が関係するため、BCP策定にはプロジェクトチームを編成する場合が多いのです。
プロジェクトチームで、緊急時の対応手順を文書でマニュアル化することをおすすめします。
理由は、緊急時でも社員がスムーズに行動できるようにするためです。
また企業を取り巻くリスク環境は、日々変化しています。
そのためBCP策定内容は、2年に一度の見直しが必要です。
BCPは一度策定して終わりではありません。
マニュアル化して体制を整え、定期的に見直すことで、事業継続の可能性を高めていきます。
BCP計画を策定する目的とメリット
BCP計画を策定したほうがよいのはわかりました。
しかし、BCPはなぜ策定するのでしょうか?
ここからはBCP計画を策定する目的とメリットについて解説します。
BCP策定の目的
BCP策定の目的は、事業の継続です。
危機的な状況に直面した場合でも、重要な業務を継続し、早期復旧を目指します。
例えば、次のようなリスクが発生し、危機的状況に追い込まれるかもしれません。
- 自然災害
- テロ
- システム障害
なにも対策していなければ、経営基盤が脆弱な企業は倒産に追い込まれることも。
適切にBCP策定をおこなえば、迅速な復旧が実現し、企業存続の可能性が高まります。
BCPに取り組むメリット
BCPは企業存続のほか、取り組むメリットがあります。
- 投資家や金融機関からの信用が上がる
- 投資や融資を受けやすくなる
- BCPの訓練により、社員の意識が高まる
- BCP体制を整えることで、業務を効率化できる
BCP策定最大のメリットは、リスク発生による制約を受けたなかでも、事業継続・早期復旧が可能なことです。
しかしそれ以外にも、事業を円滑に進めるうえでメリットが大きいのです。
事業継続計画(BCP)は企業の安定的な発展に必須
今回はBCP策定における具体的な手順について解説しました。
BCPは将来にわたって、企業が安全に発展していくのに重要な取り組みです。
特に、企業を取り巻くリスクが変化している現代において、BCPは必須だといえます。
とはいえ、BCP策定をどのように進めればいいのかわかりづらいのも事実。
この記事を参考に、自社のBCP策定にお役立てください。
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