「防災訓練って必要なの?」
「防災訓練はどのようにして実施すれば良いのだろう」
このように防災訓練について悩みを抱えていませんか?
防災訓練が必要だとは思っていても、重要性について深く理解するのは難しいもの。実施手順が詳細に記された資料も少ないので、悩んでしまう企業は多いでしょう。
そこで、この記事では防災訓練とはどのようなものかについてまとめました。この記事を読んだあとは、防災訓練の必要性について理解し、防災訓練の実施に向けて行動できるようになります。
記事後半では防災訓練の実施手順についても解説するので、ぜひお役立てください。
防災訓練は企業の責任

企業の防災訓練が重要な理由は、以下です。
- 消防法で義務付けられているため
- 従業員の命を守るため
- 災害時に慌てず行動するため
- 災害後の事業継続のため
ここからは、企業の防災訓練が重要な理由について解説します。
消防法で義務付けられている防災訓練
企業における防災訓練(避難訓練)は、消防法によって義務付けられています。実施回数は、建物の用途や規模によって異なります。企業の建物がどちらに分類されるのか、以下をご参考ください。
特定用途防火対象物:百貨店、ホテル、映画館、飲食店、病院、介護施設など
非特定用途防火対象物:学校、図書館、神社、工場、倉庫など
特定用途防火対象物であれば年1回、非特定用途防火対象物であれば年2回防災訓練(避難訓練)をおこなう必要があります。特定防火対象物で訓練を実施する際は、事前に管轄の消防署へ連絡する必要があるので注意しましょう。
防災における法律の基本|企業の義務を理解して取り組みに活かすの記事では、防災の法律について詳しく解説しています。よろしければお役立てください。
防災訓練で従業員の命を守る
企業は、従業員の命を守るために防災訓練を実施する必要があります。働く従業員を守るのは、企業の責任です。
実は、道徳的な面だけでなく、法律的にも企業は従業員を守る責任があります。企業には『安全配慮義務』が課されているためです。安全配慮義務とは、労働契約法によって定められたもので、同じ事業所で働く全従業員や来客者等の安全を守ることを目的としています。
企業が従業員を守れば、後に企業を復興させることにもつながります。すなわち、従業員を守ることは、企業のためにもなるのです。
災害時にそなえておこなう防災訓練
企業は、災害時に従業員が慌てず行動するために、防災訓練を実施する必要があります。
災害時、防災マニュアルに記した通りに行動できるとは限りません。混乱した状況下であっても落ち着いて行動するために、防災訓練で身体に行動を覚えさせることが大切なのです。
繰り返し防災訓練をおこなうと「しっかり身についた」と思ってしまうこともあるかもしれません。しかしながら、そのような場合は防災訓練の実施自体が目的となっている可能性があります。
内容や役割を変え、どのような場合にも対応できるよう訓練を重ねましょう。
災害後の事業継続を見据えて
防災訓練の実施は、災害後の事業継続にも役立ちます。防災訓練は、BCPと関わりが深いためです。
BCPとは、災害などの緊急事態における事業継続計画(Business Continuity Planning)のこと。被害を最小限に抑えて、早期復旧を図るためのものです。BCPをふまえた防災訓練をおこなえば、策定したBCPが機能するかどうかのイメージも深まります。
防災訓練では、災害時に取引先や顧客が被害をうけたケースも想定しましょう。過去の事例を活かすのもおすすめです。より現実的な対策が見えてきます。
BCPやリスクマネジメントの重要性、過去の災害事例についてはBCP策定の重要性とは?初めてでもわかる策定手順とメリットやリスクマネジメントとは?わかりやすく解説!具体的な取り組み手法も紹介で詳しく解説していますので、よろしければお役立てください。

様々な防災訓練

防災訓練とひとくくりにしても、いくつか種類があります。ここからは、以下の防災訓練を解説します。
- 避難誘導訓練
- 初期消火訓練
- 応急救護訓練
- 救助訓練
- 情報収集連絡訓練
- 帰宅困難者対策訓練
それぞれ詳しく解説するので、よろしければお役立てください。
避難誘導訓練
避難誘導訓練は、災害が起きた際の安全確認や避難行動を想定した訓練です。非常階段や通路のチェック、避難器具の使用方法などを訓練します。商業施設や店舗の場合は、お客様がいると想定した避難誘導も必要です。
「避難」と聞くとどのような場合でも同じ対応だと勘違いしてしまいがちですが、避難誘導訓練の内容は災害によって異なります。
例えば、地震が起きたことを想定した避難誘導訓練であれば、倒壊の危険がある場所やガラスが飛散しそうな場所を避けて避難しなくてはなりません。さらに、火災が発生した場合には、火元を避ける必要があります。
避難誘導訓練では、災害に合わせた経路や方法で避難誘導をおこなうのです。
初期消火訓練
初期消火訓練は、火災が起きた際の初期消火をおこなう訓練です。初期消火をおこなうかの消火判断や消火器の準備、消火栓の使用方法などを訓練します。
初期消火訓練は、延焼を食い止めるために重要です。実は、初期消火できる時間は、1分~2分のとても短い時間だと言われています。消防隊の到着までは、通報から7分~8分。初期消火の時間を逃してしまえば、消防隊の到着まで待たなくてはなりません。自分たちで初期消火できるかどうかが、企業や従業員の命を守る鍵となるのです。
訓練方法は、訓練用消火器を使用して実際に消火する方法が一般的です。「見るだけでいいのでは?」と思われるかもしれませんが、初期消火訓練は体験することが大切です。消火をやるのと見るのとでは、大きく違います。
応急救護訓練
応急救護訓練は、人命救助の方法を想定した訓練です。AED(自動体外式除細動器)の使用方法、心肺蘇生の方法などを訓練します。
人間は、心停止から5分で半数程度が亡くなると言われています。この5分間にできるだけのことをする必要があるのです。
応急救護訓練は、地域の消防署に協力してもらい実施するのが一般的です。従業員のひとりひとりが意識をもって取り組むように、訓練の重要性を周知しましょう。
救助訓練
救助訓練は、負傷者の救出や搬送手順を訓練します。災害時には、地震や土砂崩れなどによって重症者の発生も想定されます。工場の棚や什器の下敷きになることもあるかもしれません。あらゆる場合に応じた適切な対応方法を学ぶことで、負傷者の生存率をあげられるのです。
具体的には、ブルーシートを用いた担架の使用法や瓦礫の除去方法など、想定されるシーンに応じた救出方法を訓練します。
地方自治体や公共団体が救助訓練をおこなっているので、企業で参加しましょう。
情報収集伝達訓練
情報収集伝達訓練は、災害時の情報収集と伝達を想定した訓練です。災害時に必要な情報には、以下のようなものがあります。
- 従業員の安否
- 周辺地域の被災状況
- 今後の想定被害
- 顧客の状況
上記の情報をどこから収集するのか、どのように伝達するのかを確認します。緊急連絡網が正しく機能しているかも、必ずチェックしましょう。
災害時に適切な判断をおこなうには、確かな情報を集める必要があります。しかしながら、混乱した状況下では不確かな情報も増えるため、正しい情報を選択するのが困難です。情報を取捨選択して正しいものを判断するためにも、情報収集伝達訓練は重要なのです。
帰宅困難者対策訓練
帰宅困難者対策訓練は、帰宅困難者に対応する訓練です。災害時に、企業は従業員の帰宅を抑制をするかの判断に迫られます。そして、帰宅を抑制した場合には、帰宅困難者への対策をとる必要があるのです。
帰宅困難者訓練では、実際に企業が帰宅困難にどのような対策をとるのかシミュレーションをおこないます。
例えば、寝泊まりをおこなう場所、備蓄品の準備、配布方法などを、帰宅困難者と対応役に分かれて訓練しましょう。訓練時には、備蓄品の賞味期限チェックも忘れないようにしてください。
帰宅困難者対策訓練は、地方自治体などが主催している場合もあります。企業と地方自治体が連携しておこなうことで、より現実味のある訓練になります。
備蓄品については企業防災の備蓄品|もしもにそなえてできることで詳しく解説していますので、よろしければお役立てください。
防災訓練を実行する5つの手順

ここからは、防災訓練の実施手順を紹介します。具体的には、以下5つの手順が必要です。
- 防災マニュアルの作成
- 災害を想定したシナリオ作り
- 災害時の役割分担
- 訓練計画書の作成
- 防災マニュアルの修正と改良
それぞれ詳しく解説するので、ぜひお役立てください。
1.防災マニュアルの作成
防災訓練を実施する手順1つ目は、防災マニュアルの作成です。防災訓練は、防災マニュアルで記した災害時の行動をもとにおこないます。
まずは防災マニュアルの作成をし、準備ができたら内容を従業員に周知しましょう。防災マニュアルを共有することで、防災訓練で自分がどのような行動をとれば良いのか理解できます。
防災マニュアルの作成については、防災マニュアルの作り方|内容の考え方とコツで詳しく解説しています。よろしければお役立てください。
2.災害を想定したシナリオ作り
防災訓練を実施する手順2つ目は、災害を想定したシナリオ作りです。防災訓練は、実際の災害を想定して実施することで、よりリアリティのある訓練ができます。
シナリオの作成時には、防災訓練の目的を明確にします。例えば『安全に避難する方法』と目的とした訓練では、事前の避難計画を確認し、災害の種類や日時、場所や規模などの想定が必要です。
自分で作成が難しいと感じた場合には、過去の災害事例を参考にしましょう。実際に起きた災害であれば、従業員の想像力も高まり、訓練によりリアリティがでます。
3.参加者の役割分担
防災訓練を実施する手順3つ目は、参加者の役割分担です。防災訓練の実施前には、従業員それぞれに災害時の役割を決めましょう。
災害時に担当する役割には、例えば以下があります。
- リーダー:全体を統括する人
- 情報連絡担当:災害に関する情報収集や消防署などへの連絡をする人
- 消火担当:初期消火をおこなう人
- 救護担当:負傷者の救出や応急手当にあたる人
- 避難誘導担当:避難経路や建物の安全確認をおこなう人
- 社員対応担当:安否確認や物資の配給などをおこなう人
上記は一例です。企業に応じて必要なものを考え、割り当てます。
実際の災害時には、すべての従業員が社内にいるとは限りません。リーダーのような統括する立場にある人は、複数名選出しておきましょう。
4.訓練計画書の作成
防災訓練を実施する手順4つ目は、訓練計画書の作成です。日程や内容を決めたら、訓練計画書にまとめて以下に届け出ます。
- 参加者
- 地域の防災課
- 消防署
- 利用者など
訓練内容によっては、消防署などの許可が必要な場合もあります。日程調整をふくめ、事前準備にあたります。
防災訓練を実施する際は、周辺住民への周知も大切です。連絡をせず防災訓練を実施すれば、本当の災害だと誤解させてしまいます。
事前計画をたてて滞りなく防災訓練を進めましょう。
5.防災マニュアルの修正と改良
防災訓練を実施する手順5つ目は、防災マニュアルの修正と改良です。防災訓練を実施した後は、防災マニュアルの見直しをおこないましょう。
防災訓練を実施すれば、予定通りに進まないことがあります。その原因や対処法を考え、防災マニュアルを修正・改良する必要があるのです。
修正と改良をする際は、複数人でおこなうのをおすすめします。防災訓練の実施後は、ぜひ参加者と話し合う場を設けてください。多くの人の意見を聞く機会を作れれば、より具体的で役立つ防災マニュアルが完成します。
災害時にしっかり対応できるように、防災訓練後はマニュアルを改善して有事に活かせるものにしましょう。
防災マニュアルについては、企業の防災マニュアル|重要性を理解して活用するで詳しく解説しています。よろしければお役立てください。
防災訓練を実施して企業と従業員を守る
今回は、防災訓練についてまとめました。企業における防災訓練は、消防法で実施が義務付けられています。
防災訓練は、災害時に従業員それぞれが慌てず落ち着いて行動をするために必要です。繰り返し防災訓練をおこなうことで、災害時の行動を身体に染み付かせる目的があります。
そして何より、防災訓練は災害時に従業員の命を守るために重要です。従業員を守ることは、ひいては企業のためにもつながります。
防災訓練の実施は、防災マニュアルの作成から始まります。マニュアルが作成したら従業員に周知し、情報の共有に努めましょう。事前準備をしっかりおこなうことで、当日もスムーズに進められます。
防災訓練の実施後は、予定通りに進まなかった部分を確認して、防災マニュアルの改良が必要です。訓練の実施と防災マニュアルの改良を繰り返し、災害時に慌てない環境作りに励みましょう。
企業リスクマネジメントの必要性|企業が抱えるリスクを紹介では、企業のリスクマネジメントについて詳しく解説しています。よろしければお役立てください。
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